日本語の助詞「が」の教え方・指導法について(詳しい解説)

助詞とは

助詞とは、名詞の後に置く短い語のことで、例えば「は」「に」「を」「の」「から」などがあります。

日本語では、文を作るときにほとんどの場合助詞が必要であり、文を作る助けをする語が助詞であるともいえます。

名詞と助詞を組み合わせることで、助詞の力によって名詞に意味を加えたり役割を与えたりすることができます

したがって、助詞というのは、名詞がある意味や役割を表すことの目印として存在していると考えることもできます。

具体例をみていきましょう。

「は」は話題を提示するのに使います。例えば、「その花」という話題について語る際に、「その花」の後に助詞「は」を置き、「その花は」で話題を提示し、その後に例えば「きれいです」などの説明を加えることで文が作られます。

したがって、助詞「は」は自身の前に来る語が話題を表す語であるという目印(マーカー)として存在していると考えることもできます。

「に」は到着場所を表す際に使います。例えば、「行く」という動作に対し、具体的な行き先(場所)を示す場合に「に」を使います。「東京」が行き先であればその後に助詞の「に」を置き、「東京に」とし、「行く」という動作と組み合わせることによって動作とその動作に関係する行き先を言い表すことができます。

日本語の助詞の「に」が到着場所を表す際に使う語であることが日本人の間で共通認識となっているので、仮に「マチュピチュに行く」と誰かに言われた時に、「マチュピチュ」が何か分からなくても助詞の「に」によって「マチュピチュ」がとある場所のことであると見当をつけることができます。

したがって、助詞「に」は自身の前に来る語が到着場所を表す語であるという目印(マーカー)のようなものであると考えることもできます。

さて、助詞を目印(マーカー)として考えると、日本人がどのように文を組み立てているか理解しやすくなります。

例えば「僕は東京に行きました」という文は、「僕」の後に置いた助詞「は」によってそれが話題であることを明らかにし、「東京」の後に置いた助詞「に」によってそれが到着場所であることを明らかにしています。

このようにして、日本語はひとつひとつの語がどのような意味や役割を表しているのかを助詞を使って都度明らかにしながら文が組み立てられていることが分かります。

他にも英語と比較して日本語の助詞を説明することもできます。日本語の助詞は英語の前置詞(preposition)と似た機能を持ちます。

英語で「行く」は「go」です。「東京に行く」は英語で「go to Tokyo」です。「to」は前置詞で、例えば行くという動作「go」に関係する場所(到着点)を示す場合に使われます。「Tokyo」の前に「to」を置いて「to Tokyo」とし、動詞の「go」と組み合わせることによって動作とその動作に関係する場所を言い表しています。

なぜ前置詞(preposition)という名前が付けられているかというと、基本的に名詞の前に置かれるという特徴があるからです。

日本語の助詞は英語の前置詞と同じような機能を持ち、基本的に名詞の後に置かれるという特徴があるので、助詞のことを後置詞(postposition)と呼ぶこともできます。

英語を話す外国人に助詞を教える際は、前置詞と助詞には似た機能があり、助詞とは後置詞(postposition)であると説明する方法もあります。

以上の説明で、助詞がどういう語なのか理解できたかと思います。

それでは、助詞「が」の教え方について説明していきたいと思います。

☆英語を使って助詞「が」を教えたい場合はこちらのリンク先の記事をご活用ください。

How to use particle ga/が in Japanese

助詞「が」の教え方

助詞「が」をどのように使えばよいのかを学習者に教えましょう。

引き立て役

助詞「が」は言葉を引き立てる役割を持っています。言葉を引き立てるとは、ある言葉を目立たせるということです。

助詞「が」は自身の前に来る語が目立たせる必要のある重要な語であるという目印(マーカー)のようなものであると考えることもできます。

日本語において助詞「が」を使って目立たせる言葉というのは、習慣的に、ある程度決まっています。ここで、習慣的というのは、長い間繰り返し行われていて、そうすることが決まりのようになっているという意味です。

したがって、助詞「が」を使って目立たせる言葉は、日本人にとっては自然ですが、日本語を新たに学ぶ学習者にとっては難しいので単純に日本人の習慣的な使い方を真似してもらう方法が手っ取り早いです。しかし、そうしてしまうと明かりも持たずに暗闇を闇雲に進んでいくような状態になってしまい、助詞「が」の特徴を掴みきれずモヤモヤさせてしまいかねないので、ひとつひとつの助詞「が」の使用例について学習者がなぜここで助詞の「が」が使われているか納得できるようにできるだけ論理的に説明してあげることが大切です。

助詞「が」を使って目立たせる対象はたとえば次のようなものです。

助詞「が」を使って目立たせる対象

好きな物、必要な物、欲しい物、できること、信じられないもの、発見したもの、特定のもの、際立った状態のもの、紹介しようとしているもの、ひとつしかないもの、WH疑問文の主語、WH疑問文の答え、など

助詞「が」はこれらの対象を引き立てる目印(マーカー)のようなものであると考えることもできます。

それでは、目立たせる対象ごとに例文をみていきましょう。

「好きな物」を引き立てる

好きな物は助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 1

Eega ga suki.
えいが  すき。
映画  好き。
[movies ga/が favorite]
I like movies.

好きな物は「映画」で、その「映画」を助詞「が」によって引き立てます。助詞「が」は好きな物を引き立てるので、形容詞「好き」は助詞「が」と一緒によく使われます。

「必要な物」を引き立てる

必要な物は助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 2-1

Motto okane ga hitsuyoo desu.
もっと おかね  ひつよう です。
もっと お金  必要 です。
[more money ga/が need is]
I need more money.

必要な物は「お金」で、その「お金」を助詞「が」によって引き立てます。助詞「が」は必要な物を引き立てるので、形容詞「必要」は助詞「が」と一緒によく使われます。

例文 2-2

Motto okane ga iru.
もっと おかね  いる。
もっと お金  要る。
[more money ga/が need]
I need more money.

助詞「が」は必要な物を引き立てるので、動詞「要る」も助詞「が」と一緒によく使われます。

「欲しい物」を引き立てる

欲しい物は助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 3

Tokei ga hoshii.
とけい  ほしい。
時計  欲しい。
[Watch ga/が desire]
I want a watch.

欲しい物は「時計」で、その「時計」を助詞「が」によって引き立てます。助詞「が」は欲しい物を引き立てるので、形容詞「欲しい」は助詞「が」と一緒によく使われます。

「できること」を引き立てる

できることは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 4

Eego ga dekiru.
えいご  できる。
英語  出来る。
[English ga/が possible]
I can use English.

できることは「英語」で、その「英語」を助詞「が」によって引き立てます。助詞「が」はできることを引き立てるので、動詞「出来る」は助詞「が」と一緒によく使われます。

「信じられないもの」を引き立てる

信じれれないものは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 5

Kore ga tamago desu ka.
これ  たまご です か。
これ  卵 です か。
[this ga/が egg is ?]
Is this (really) egg?

信じられないものは「これ」で、その「これ」を助詞「が」によって引き立てます。信じられないものに対して、それが真実かどうかを確かめたいという気持ちが助詞「が」に込められています。

「発見したもの」を引き立てる

発見したものは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 6-1

Hebi ga iru.
へび  いる。
蛇  いる。
[a snake ga/が is]
There is a snake.

発見したものは「蛇」で、その「蛇」を助詞「が」によって引き立てます。助詞「が」は発見したものを引き立てるので、動詞「いる」は助詞「が」と一緒によく使われます。

例文 6-2

Heya ni tsukue ga aru.
へや に つくえ  ある。
部屋 に 机  ある。
[room ni/に desk ga/が is] or [room ni/に desks ga/が are]
There is a desk in the room. / There are desks in the room.

発見したものは「机」で、その「机」を助詞「が」によって引き立てます。助詞「が」は発見したものを引き立てるので、動詞「ある」も助詞「が」と一緒によく使われます。

「特定のもの」を引き立てる

特定のものは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 7-1

Umi ga kirei.
うみ  きれい。
海  きれい。
[the sea ga/が beautiful]
The sea is beautiful.

特定のものは「海」で、その「海」を助詞「が」によって引き立てます。特定の「海」とは、海全般のことではなく、例えば、今自分が眺めている海のことです。

ちなみに、海全般のことを言うときは、助詞「は」を使い、「海はきれい」と表現されます。

例文 7-2

Ashita ame ga furu.
あした あめ  ふる。
明日 雨  降る。
[tomorrow rain ga/が fall]
It will rain tomorrow.

特定のものは「雨」で、その「雨」を助詞「が」によって引き立てます。特定の「雨」とは、特定の地域に降ってくる雨のことです。

「際立った状態のもの」を引き立てる

際だった状態のものは助詞「が」を使って引き立てます。際立った状態とは、普段とは違って気にせざるを得ないような状態のことをいいます。

例文を確認してみましょう。

例文 8-1

Taiyoo ga mabushii.
たいよう  まぶしい。
太陽  眩しい。
[the sun ga/が bright]
The sun is bright especially now. / The sun is bright especially here.

際だった状態のものは「太陽」で、その「太陽」を助詞「が」によって引き立てます。際立った状態とは、普段とは違って気にせざるを得ないような状態のことで、例えば、太陽の光が直接目に入ってくるような場合です。

ちなみに、一般に太陽がまぶしいという特徴を持っていると表現したい場合には、助詞「は」を使って、「太陽はまぶしい」と言います。

例文 8-2

Atama ga itai.
あたま  いたい。
頭  痛い。
[head ga/が painful]
I have a headache especially now.

際だった状態のものは「頭」で、その「頭」を助詞「が」によって引き立てます。

「紹介しようとしているもの」を引き立てる

紹介しようとしているものは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 9

Mukashi mukashi arutokoro ni ojiisan to obaasan ga sunde-i-mashita.
むかし むかし あるむら に おじいさん と おばあさん  すんでいました。
昔 昔 ある村 に お爺さん と お婆さん  住んでいました。
[long-ago long-ago certain-village ni/に old man to/と old woman ga/が live-is-polite-past]
Long, long ago, there lived an old man and woman in a village.

物語の登場人物として紹介しようとしているものは「お爺さんとお婆さん」で、その「お爺さんとお婆さん」を助詞「が」によって引き立てます。

「ひとつしかないもの」を引き立てる

ひとつしかないものは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 10

Tookyoo ga nihon no syuto desu.
とうきょう  にほん の しゅと です。
東京  日本 の 首都 です。
[Tokyo ga/が Japan of capital is]
Tokyo is the only capital of Japan.

日本にひとつしかない首都は「東京」で、その「東京」を助詞「が」によって引き立てます。

「WH疑問文の主語」を引き立てる

WH疑問文の主語は助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 11

Dare ga tsukutta no.
だれ  つくった の。
誰  作った の。
[who ga/が made ?]
Who made it?

WH疑問文の主語は「だれ」で、その「だれ」を助詞「が」によって引き立てます。他に「なに」「いつ」「どこ」「どれ」が主語になるときも助詞「が」を使って引き立てます。

「WH疑問文の答え」を引き立てる

WH疑問文の答えは助詞「が」を使って引き立てます。

例文を確認してみましょう。

例文 12

Boku ga tsukutta.
ぼく  つくった。
僕  作った。
[I ga/が made]
I made it.

WH疑問文の答えは「僕」で、その「僕」を助詞「が」によって引き立てます。

まとめ

助動詞「が」は言葉を引き立てるときに使います。

また、助詞「が」が引き立たせる対象には次のようなものがあります。

  • 好きな物
  • 必要な物
  • 欲しい物
  • できること
  • 信じられないもの
  • 発見したもの
  • 特定のもの
  • 際立った状態のもの
  • 紹介しようとしているもの
  • ひとつしかないもの
  • WH疑問文の主語
  • WH疑問文の答え

助詞「が」の教え方の解説は以上になります。

☆英語を使って助詞「が」を教えたい場合はこちらのリンク先の記事をご活用ください。

How to use particle ga/が in Japanese

助詞「が」は助詞「は」との使い分けが非常に難しいので、助詞「が」と助詞「は」の違いや使い分けについても外国人に教えてあげてください。

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